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四日市市の大学設置について基本構想が公開されました。内容を簡単に紹介します。
四日市市が基本構想を公開
四日市市はかねてより、中心市街地に大学を設置する構想を立て、その課題について策定委員会を設置して議論してきました。そして令和6年3月29日、公式ホームページにて基本構想の公開に至りました。かいつまんで内容を紹介します。
大学設置の目的
高等教育のニーズ
四日市市は、日本を代表する石油化学コンビナートをはじめとして、半導体、自動車、食品など非常に多くの製造業が集積しています。地域の産業の持続的な発展のためには、地域の人材活用が重要であり、その人材を養成するための高等教育機関が必要であるとしています。
また、今後の人口減少もふまえ、生産性向上のためのAI・IoT・ビッグデータの活用が特に製造業では重要であり、その活用を担える人材を育成するため、特に理系の高等教育が今後重要になってくるとしています。
四日市市と北勢地域の高等教育の現状
一方、三重県の高等学校卒業者は14,607名、大学進学者は7,097名となっており、大学進学率46.7%は全国平均56.6%を下回っています(いずれも令和4年度)。対して三重県内は3,230名と大学入学定員が少ないことが、大学進学または県外流出を招いていると報告しています。
さらに、三重県内の大学の学部を見ていくと、全国はもちろん東海地域と比べても理学部や工学部が低い整備水準です。理学にいたってはゼロです。理工系の高等教育を求め、三重県出身の高校生が愛知県や岐阜県の大学を志望することで、県外流出がいっそう進んでいるとのことです。
名古屋市内だけでも、愛知県の最上位である名古屋大学のほか、名古屋市立大学や名城大学といった交通の便の良い大学がいくつかあり、しかも理工系の学部もあります。四日市市から1時間台で行けてしまいますし、大学近くに一人暮らしするにしても帰省しやすいので、愛知県の大学に進学する学生は多いでしょう。名古屋が娯楽の面でも魅力が高いことも向かい風です。
大学設置場所
大学を設置する場所は、JR四日市駅前としています。JR関西線と伊勢鉄道線が乗り入れます。近鉄名古屋線の陰に隠れていますが、JR関西線も三重県を縦に貫く重要な公共交通であり、桑名市や亀山市からの通学も可能です。また伊勢鉄道線を介して鈴鹿市や津市、松阪市などからも通学できるので、交通利便性は相応に高いといえます。
令和6年現在のJR四日市駅前はさびしい限りですが、大学が設置されれば一気に活性化するのではないかと考えます。コンビニや商業施設が建つようになれば人が増え、相乗効果が期待されます。
大学設置の方針
基本方針
設置する大学は、地域連携や産学連携を取り入れた実践的教育研究を行うとのことです。企業としても社外の専門知識を活用して早期の事業拡大につなげられるでしょうし、大学の研究シーズを社会実装することを推進する狙いもあります。高度な研究力・探求力を養成するため、大学院(修士課程・博士課程)を設置します。
また県内や東海地域の大学とも連携するということです。学生や教員、研究者の相互交流を図るとのことで、教員が出張して講義したり、共同研究したりといったことを想定したものでしょう。
教育研究方針
「地域および産業界との協力・連携を活用した教育研究」「学修者本位の大学教育の実践」「知識の共通基盤の確立と実践力の養成」「学生・教員・職員の多様性を活かした教育研究体制」「新しい教育研究を実現する環境の整備」といった方針を挙げています。
「新しい教育研究を実現する環境の整備」の箇所では、要は魅力的なレイアウトの大学施設を整備しますよ、ということのようです。中心市街地の再開発で中央通りにもニワミチ空間という目玉を作りますが、これをキャンパスの一部のように見せることで独自性を打ち出すのでしょう。
整備内容
整備エリアと機能
前記の通り、大学はJR四日市駅前に設置します。中心市街地の再開発プロジェクトが行われている中央通りでは、ニワミチ空間として市民が多目的に使用できるようにします。大学キャンパスをニワミチ空間の一部として整備し、大学を中央通りの東側におけるいわばランドマークとします。
設置形態・設置主体
校舎は通常の機能に加え、複数大学、高専、企業との 研究等各種連携をJR四日市駅前の同一の建物にて行うことで相乗効果を図ります。単なる教育施設にとどまらない地域の交流施設となることが期待されます。
設置主体は複数の大学で構成される大学コンソーシアムも検討します。連携を発表している国立大学である三重大学のほか、公立大学の設置や私立大学の移転による大学間連携を念頭に置いて計画を推進します。
基本構想を受けての雑感
基本構想の内容としては、これまで報道されてきたものから目新しいものはありません。それでも、行政から正式に公開されたということは着実な前進を示すものと言えます。
JR四日市駅は近鉄四日市駅に中心の座を明け渡してからは元気のない状態が続いています。その現状を打破するため市内外から人を呼べるようなランドマークを作るのは極めて効果的であり、その具体策として大学設置は良案でしょう。さびれた駅前が功を奏して設置場所の課題も小さそうです。
三重県内の大学には理工系、特に理学部が見当たらないので、その穴を埋める存在になることで市外・県外からの流入が増加するとよいですね。
JR四日市駅前にたくさんお店ができてにぎやかになったり、JR関西線が増発して名古屋や津に行くのがもっと便利になったりすると、個人的にはうれしいです。そんな未来が見たい!
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