このブログでは、ごく普通の30代男性会社員が9ヶ月と長期の育休取得し、 その期間も生かして独学で中小企業診断士試験に合格した体験を発信しています。
今回は、中小企業診断士試験の合格を独学で目指すうえで、2次試験の勉強は1次試験と並行すべきかどうか?、そのメリットとデメリットについて考えます。
なお独学の受験生を対象とした内容ですので、通学・通信の方は予備校のカリキュラム通り進めればよいと思いますが、何かと参考になる可能性もなきにしもあらずなので、お読みいただければうれしいです。
1次試験と2次試験の特徴
1次試験の特徴
1次試験は全7科目を二日間かけて行われる、マークシートの選択式です。経営理論および周辺知識の習得度合いを測る試験になりす。
7科目を総合した試験範囲は非常に広いですが、足切りの40点を上回っていれば全科目の平均点が60点を超えていればよいので、苦手科目の克服と得意科目の成長をうまくバランスして取り組むことが重要です。科目合格制度もあり、複数年度をかけて1次試験全体を合格することもできます。
2次試験の特徴
2次試験は全4科目を一日かけて行われる、記述式の筆記試験です(後日に口述試験もあります)。実際の企業をモデルにした(と言われている)事例の与件文から、現状を分析し問題点を見つけ、課題を解決するため提言する、一連の経営診断・助言の能力を問われる試験です。
1次試験よりも応用力が必要になります。量だけでなく質も高めた勉強が必要になりますので、時間をかけるというよりは、的確な勉強方法を見つけることが重要です。1次試験に合格した年度はもちろん、その翌年度にも受験のチャンスが用意されていますので、たとえば「1年目は独学、2年目は予備校通学」というように状況に応じた対応を打つこともできます。
1次試験と2次試験の勉強を並行するメリット
それでは1次試験と2次試験の勉強を並行する場合、まずはメリットからです。
2次試験の合格率が上がる
2次試験の勉強を1次試験が終わる前に始めれば、それだけ長い期間を費やすことができるため、基本的には2次試験の合格率が上がることが期待されます。
はじめのうちは2次試験特有の与件文解釈や解答パターンに慣れるために、ある程度の時間が必要です。1次試験後から動き出す場合と比べて、スムーズに演習などに入れるでしょう。
勉強時間を効率的に配分できる
資格試験の勉強は、勉強時間が増加するにつれて効果(=合格率)の増加が逓減するのが一般的です。はじめは知識を次々と習得していくことで問題がどんどん解けるようになりますが、やがて新たに得られる知識が少なくなり、問題演習に時間をかけても得点の上乗せがそれほど期待できなくなってきます。
したがって、学習範囲を広げたほうが、学び始めの「どんどん解ける時期」を多くの科目で経験できるので、うまくいけば勉強時間を効率的に配分できることになります。
モチベーションを上げられる
人によるところにはなりますが、1次試験の勉強ばかりしていると同じ内容の繰り返しになり、なんだか飽きてくることもあるかもしれません。
そんなときに2次試験にも寄り道してみると、1次試験とは違った知識や解法となるため良い気分転換や刺激となります。また「これが最終試験!」と意識して2次試験の勉強に取り組むことで試験勉強全体としてモチベーションの向上につながることも期待されるでしょう。
1次試験と2次試験の勉強を並行するデメリット
続いて1次試験と2次試験の勉強を並行するデメリットを挙げていきます。
1次試験の合格率が相対的に下がる
1次試験の勉強に費やすはずの時間を2次試験の勉強に振り分けるので、すべての時間を1次試験に費やす場合と比べれば、どうしても1次試験の合格率は相対的に下がる方向に行きます(注・絶対的に下がるわけではありません)。
1次試験に受からないことには2次試験を受験する資格さえ得られませんので、まずは1次試験を合格基準に乗せられる見込みかどうかを注意深く見極める必要があります。
勉強の範囲が広くなり負担が大きい
中小企業診断士試験は1次試験だけでも7科目あり範囲が非常に広いです。そのうえ2次試験の範囲というか合格に必要な知識(用語・解法)もまた1次試験と異なるため、1次試験と2次試験を並行して勉強すると頭脳を多く使用しますし、勉強時間も長くなって睡眠時間が削られるなど、体力的な負担が大きくなります。
あまりに体力的な負担が大きいと、仕事や家事・育児に影響が出てきたり、モチベーションが下がったりして、人生の幸福度が下がることにつながりますので、無理のない範囲にとどめておくことが重要です。
1次試験への不安を抱えながらの勉強になる
述べた通り1次試験の合格率が相対的に下がったり体力的な負担が増えたりするので、1次試験に大きな自信が無いかぎり、2次試験の勉強が不安を抱えながらになるということもあるでしょう。不安に押しつぶされて勉強時間を有効に使えず、1次試験が不合格になってしまうようでは本末転倒です。
もちろん、どれほどの不安に陥るかは人によって変わってくると思いますので、ご自身の性格とも相談ということになると思います。
2次試験の勉強を始める前に
以上にメリット・デメリットを上げてきましたが、では結局のところ2次試験の勉強は1次試験と並行すべきなのでしょうか?
先に答えを言ってしまうと「どちらでもよい、人による」としか言えません。どちらのやり方でも合格に達した方は大勢いるわけなので、一律に○○すべきというものはありません。それよりも、今回お示しするメリット・デメリットを理解したうえで、どちらがご自身に合っているのか、気づいてもらうことが重要です。
実際にご自身の学習状況・性格に照らし合わせるため、以下のチェック項目を確認して判断することをおすすめします。2次試験の勉強を並行して始めるのは、できれば全て当てはまる場合にしたほうがよいでしょう。
- 1次試験が合格水準に達しつつあるか
- 2次試験が苦手か
- 範囲が広くなることに不安はないか
1次試験が合格水準に達しつつあるか
問題集や過去問の演習を繰り返して、1次試験に合格水準に達しつつある場合は、2次試験の勉強に少し時間を回してもよいでしょう。一方、合格水準まで達していない場合は、無理せず1次試験の勉強に集中すべきです。
2次試験が苦手か
2次試験が苦手な人、具体的には「読解力や記述力が十分でない人」または「計算問題が苦手な人」は、早めに勉強に着手することで慣れてきて苦手意識が少なくなることが期待されます。一方、2次試験が苦手でないと思われる人、具体的には「一定の読解力や記述力がある人」かつ「計算問題が苦手でない人」は、2次試験の勉強は1次試験後からでも十分に間に合いますので、安心して1次試験に集中しましょう。
2次試験が苦手そうか簡易的に判断するには、早いうちに本試験の過去問を一度解いてみるのが最も簡単です。ここでほとんど解けなくてもまったく問題なく本試験には合格できますので、ご自身の立ち位置を知る方法としておすすめです。
範囲が広くなることに不安はないか
1次試験だけでなく2次試験の範囲も勉強することになったとして、それがモチベーション向上につながる人は、2次試験の勉強にも踏み出してみると、相乗効果で1次試験合格への意欲も増してくるでしょう。一方、どうしても不安があり、1次試験にしか心の余裕を持たせたくない人は、まずは1次試験の合格を確実につかみ取る必要があります。
「マルチタスクが得意な方」(あるいは言い方は悪いですが「飽きっぽい方」)は前者に近く、「1つの物事に没頭して集中できる方」(あるいは言い方は悪いですが「マルチタスクが苦手な方」)は後者に近いと言えるのではないでしょうか。
最後に:私の場合
中小企業診断士の試験制度から分かる通り、1次試験から難易度が低くなく、しかも合格してしまえば当年度だけでなく翌年度の2次試験も受ける権利を得られるため、まずは1次試験の合格に全集中すべきと私は考えていました。
加えて、本試験3ヶ月前に受験したTACの1次公開模試で惨敗を喫しており、1次試験の合格水準に達していないことが判明したうえ、このまま2次試験に手を出しても1次試験が不安で集中できないと考えたため、2次試験の勉強は1次試験後から始めることとしました。
1次試験は選択式で自身の解答を控えておきやすく、翌日には診断協会から正答も公表されるので、マークミスを無視すれば1次試験翌日には合否が判明します。翌日午前に合格の見込みが立った私は、そのまま午後に「ふぞろいな合格答案シリーズ」を購入しに書店へ出かけました。地方都市だからかトータル5年分は在庫があり揃えられてよかったです。
幸い、読解や記述にはすんなり入り込めましたし、事例Ⅳの計算問題も理系出身かつ簿記検定合格という経験を生かせたことで、筆記試験までになんとか合格水準に乗せることができました。
これから受験される方にも、ぜひ1次試験と2次試験のバランスをよく考えながら、勉強時間を振り分けていってほしいなと思います。
追記
1次試験を保険受験(前年度の1次試験に受かっているものの、2次試験の受験資格を延長するために当年度も1次試験を受験すること)する人は例外です。2次試験の勉強は速やかに着手しましょう。1次試験に落ちても当年度の2次試験の受験資格を失わないことが理由です。
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