中小企業診断士試験の会場を1つ増やすならどの都市が望ましいか?

中小企業診断士

このブログでは、ごく普通の30代男性会社員が9ヶ月と長期の育休取得し、 その期間も生かして独学で中小企業診断士試験に合格した体験を発信しています。

今回は、「中小企業診断士試験の会場を1つ増やすならどの都市が望ましいか?」について考察してみたいと思います。

現在の試験会場

中小企業診断士試験は全都道府県で実施されるわけではなく、申し込みの際に希望の会場を申告する必要があります。1次試験の会場は以下の8つです。2次試験では那覇が無くなり7会場となります。

札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・那覇

選ばれた都市はいずれも各地方の代表という感じですが、日本地図にプロットしてみると、どの会場にも遠い都道府県がけっこうな数ある気がします。そこでふと思いました。

もし会場を1つ追加するとしたら、どの都市だと受験者が最もうれしいんだろう?

そこで実際に、ある程度の定量的な指標も活用しながら、調べてみることにしました。

なお、今回の記事ではわかりやすく「受験者がうれしい」=「移動時間が短い」と定義します。「遠いほうが泊まる口実ができて楽」「大都市のほうが夜が楽しい」などは考慮していません。(考慮の仕方がわかりません!)

戦前予想(?)としては、地理的に空白地帯である日本海側をカバーするために新潟駅もしくは金沢駅あたりかと推測します。

現状の把握

調査の前提

まずは現状を定量的に把握するため、最寄りの会場までの移動時間を全47都道府県で調査しました。前提は以下の通りです。

  • 各県庁所在地から最も近い会場までの鉄道(新幹線や特急を含む)・飛行機での所要時間を乗換案内で検索
  • 日時は2022年5月8日午前8時30分着、日をまたぐ場合は前日終電
  • すでにある試験会場および各県庁所在地の最寄り駅は同名の駅とする
  • さいたま市の最寄り駅は市役所に近い浦和駅
  • 福岡市の最寄り駅は新幹線や特急も停まる博多駅
  • すでに試験会場のある県内での移動時間は0分

各都道府県からの移動時間

各都道府県から最寄りの試験会場までの移動時間について、近いほど色が薄く、遠いほど色が濃くなるようにした地図が下図になります。当日の移動だけでは到着できない都道府県は赤枠で囲っています。

当初の予想通り、日本海側は移動時間が長くなる傾向にあります。いちおう東北地方は各県から新幹線が仙台駅まで通っており、距離の割に当日着が可能となっています。

北陸3県は東京にしろ大阪にしろ時間がかなりかかります。富山駅は東京都まで北陸新幹線で1本ですが、8時30分までには到着できません。(実は8時32分に到着する列車はありますが、言い出すときりがないので)

また広島県に接しているにも関わらず、鳥取県島根県からは始発でも8時30分に着けません。鳥取駅は大阪駅のほうが移動時間が短い有様です。島根県は広島駅直行の高速バスでも209分かかり、移動時間が全47都道府県で堂々のトップです。

四国4県からも軒並み移動時間が長く、愛媛県高知県からは前日移動しか手がありません。高知県からは広島着193分で、島根県に次ぐ移動時間2位です。徳島県からも当日朝移動なら広島県ではなく大阪府とする必要があり、しかも高速バスになります。

九州地方では宮崎県が文字通り陸の孤島と化していることが判明しました。博多駅まで特急でもとんでもない時間がかかるので前日の飛行機移動が最善解です。大分県からも移動時間が長くかかるようで、新幹線の偉大さがわかります。

生産年齢人口も考慮した追加会場の需要推定

さてメインとなる追加会場選定です。移動時間の長い都道府県が集まるエリアにいきなり会場を追加すればよいかといえばそう単純ではなく、その会場ができて恩恵を受ける受験生がどれだけ多いかも考慮する必要があります。

都道府県ごとの受験者数を見積もることは診断協会にでも聞かないかぎりわかりません(聞いても答えてくれるわけもありません)ので、最も簡単に参照できる代替指標として生産年齢人口を挙げてみます。これは15歳から64歳までの人口を指し、診断協会から公表されている受験者の年齢別人数を見ても妥当な年齢層と考えます。

移動時間が長い都道府県が多く集まっている「東北(宮城県を除く)」「甲信越・北陸」「中国(広島県を除く)」「四国」「九州(福岡県を除く)」に分けて、各都道府県の移動時間と生産年齢人口をプロットしたものが下図になります。わかりにくくなるので一部の都道府県名のみ表示しています。

出典:日本の統計2022,第2章 人口・世帯,「2-6 都道府県,年齢3区分別人口」(総務省統計局)

このプロットにおいて、左上(受験者数が多く近い会場もある)と右下(受験者数が少ないため会場から遠いがしょうがない)は妥当な領域となっています。そして、右上に行けば行くほど、受験者数は多いのに会場から遠い、すなわち近い会場を設けるメリットが大きい領域です。

左上から右下にかけての妥当な領域を右上側に外れている都道府県が思ったよりも少なく迷いましたが、以下の3つの組み合わせを挙げてみました。なお中国地方と四国地方については、後述の岡山会場による効果が大きいため、ここでは考えないことにしました。

新潟県・長野県

新潟県が右上側にあり、長野県も移動時間が短くないわりに生産年齢人口が多いです。新潟駅長野駅に会場を設けるだけでも相当な効果が見込めそうです。そのほかには、それぞれから距離はありますが中間の直江津駅、もしくは上越新幹線と北陸新幹線の分岐する高崎駅(群馬県)が、追加する会場の候補となります。

富山県・石川県

石川県は右上側にいますし、富山県もまあまあの需要はありそうです。では追加の会場は金沢駅富山駅かというところですが、福井県だけでなく長野県のメリットも考慮が必要です。

大分県・宮崎県・鹿児島県

九州地方からは4県がプロット中央付近にあります。残念ながら長崎県は離れてしまっていますが、隣接する大分県・宮崎県・鹿児島県のうちどこかに会場を追加することで、効果が生まれる可能性があります。

メリットの定量化と比較

周辺の都道府県から会場候補となった駅への移動時間を同じ条件で再度調査しました。その結果、移動時間の短縮が図られた都道府県をリストアップしたものが、下表になります。

追加候補恩恵を受ける都道府県
高崎群馬県、新潟県、富山県、石川県、長野県
新潟新潟県
直江津(無し)
富山富山県、石川県、福井県、長野県
金沢富山県、石川県、福井県、長野県
長野群馬県、富山県、石川県、長野県
大分大分県
宮崎宮崎県
鹿児島鹿児島県

残念ながら直江津駅はここで脱落となりました。やっぱり新幹線が強い。恩恵を受ける都道府県の数だけ見ると、高崎駅、富山駅、金沢駅、長野駅が強そうな気がします。

ただもう少し定量的に評価したかったので、各会場を追加する際のメリットは以下のように算出しました。各都道府県内トータルでどれだけの時間が節約できたか、というイメージです。

メリット=移動時間の短縮分 [分] × 生産年齢人口 [人]

各会場を追加した際に生み出されるトータルのメリットを以下のグラフにまとめました。都道府県別にどれだけのメリットスケールがあるのかも細分化して表示しています。なおメリットの数値自体は意味がなく、あくまで相対評価でしかないので載せていません。

結論と考察

というわけで、最も会場として追加してメリットが大きいのは、

富山駅

ということになりました!ぱちぱち!

日本海側のどこかという戦前予想には合致していますが、新潟駅はともかく、金沢駅ではなくまさか富山駅とは!(失礼)富山県だけでなく、移動時間が大幅に減少(大阪着164分→富山着23分)した石川県、生産年齢人口の多い長野県が底上げに貢献したようです。金沢駅は長野県から遠い側だっただけ、富山駅の後塵を拝しました。

長野駅は長野県1県だけだとかなりのメリットでしたが、富山県・石川県にとってのメリットがもうひと伸び欲しかったところです。高崎駅も群馬県・新潟県・長野県にとって一定のメリットをもたらしますが、東京駅と比較して移動時間がそこまで短縮しなかったのが、及ばなかった原因になりました。

九州3県はそれぞれの距離が遠く、単独でのメリットしか生み出せなかったことが響きました。一方で新潟駅は新潟県1県だけにもかかわらず生産年齢人口の多さが効いて、それなりのメリットは潜在するようです。

今回の調査で改善の余地があると感じたのは、「移動距離が十分に近くなると新幹線・特急を使わなくなる可能性」を考慮していないことです。今回は富山駅が最もメリット大となりましたが、実は金沢駅から新幹線に乗っている効果が大きいです。在来線でも64分あれば行けるので、新幹線に乗る人は実際には多くないかもしれません。ただ、新幹線から在来線に変更することで特急料金が不要となり金銭的なメリットも発生することになりますが、上記のメリットの算出には考慮しておらず判断が難しくなりそうだったので、今回は移動時間の短縮のみにフォーカスすることにしました。

番外編:広島でいいのか?

今回は会場を1つ追加という前提で調べてきましたが、調査していてふと思ったのが、中国・四国地方の移動時間が長いのは、広島会場のせいではないか?ということです。そこで、仮に広島会場を岡山会場に変更した場合の、中国・四国地方各県からの移動時間および移動距離を調べてみました。

ほとんどの県で移動距離が大幅に短縮します。鳥取駅・松江駅はいずれも広島駅より岡山駅のほうが近く、また四国4県はいずれも広島駅に向かう前に岡山駅を必ず経由するためです。距離が延びる山口駅も、岡山駅ではなく博多駅とすれば移動距離は広島駅とほとんど変わりませんので、広島会場が無くなるデメリットは十分に小さいです。

移動時間の短縮の程度は移動距離ほどではありませんが、前日移動だった県からもすべて当日移動が可能になることがわかります。岡山駅から広島駅の移動時間は30~40分ですが、これが無くなるだけで効果が大きいですね。徳島駅から大阪駅まで高速バスだったのも岡山駅まで鉄道となり、試験会場への移動にあたり定時性が向上するのは大きなメリットです。

もう1つの結論:広島会場ではなく岡山会場に変えよう

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